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GTC2025 基調講演レポート:ジェンスン・フアンCEOが示す次世代AIとコンピューティングの潮流

2025.03.27 レポート

3月にカリフォルニア州サンノゼで開催された世界的なAI カンファレンス「GTC2025」の現地レポートと、NVIDIAの共同創業者兼CEOであるジェンスン・フアン氏のKEYNOTEの内容をお伝えしたいと思います。

 

GTCは世界各国から来場し、現地にはおよそ25,000人が参加しました。当社設立前から10回以上参加していますが毎回エキサイティングなイベント内容に圧倒されます。

 

GTC2025 会場の様子

 

水冷システムMGX Ecosystemが展示されていました。
冷却に要する電力量の大幅な削減のためにも、水冷はマストな選択肢となっています。

 

水冷システムMGX Ecosystem

 
 

そしていよいよ、JensenのKEYNOTE。10000人以上収容できるSAPセンターは満員でした。


 
 
 

それでは、本編をご紹介させていただきます。

 

 

 NVIDIAは2025年3月18日から3月21日(現地時間)にかけて、カリフォルニア州サンノゼのSAPセンターおよびオンラインにて年次イベント「GTC」を開催した。その開幕を飾る基調講演には、NVIDIAの共同創業者兼CEOであるジェンスン・フアン氏が登壇し、Agentic AI、ロボティクス、アクセラレーテッドコンピューティングといった分野における最新の進展と、今後の展望について詳細に語った。

 本講演は、AIが社会のあらゆる側面に浸透し、変革をもたらす未来を予見させるものであり、技術業界のみならず、広範な分野からの注目を集めたと言える。

 

AIが創造する新たなフロンティア

GTC 2025の基調講演で講演するNVIDIA CEO ジェンスン・フアン氏(出典:GTC: Spring 2025 Keynote、NVIDIA)

 

 フアン氏は講演の冒頭において、現代のAIを「知能を創出する新たな工場、すなわちトークン生成の機関である」と表現。AIによって生成されるトークンは、単なるデータ単位ではなく、無限の可能性を秘めた新たなフロンティアへの第一歩を示すものだと強調した。

 例えば、トークンは画像を科学的データへと変換し、未知の惑星の大気を解析し、未来の探査者を導く。また、生のデータを洞察力へと昇華させ、将来への備えを可能にする。さらには、物理法則を解読し、人類をより速く、より遠くへと導き、病気が深刻化する前に検知する。生命の言語を解き明かし、生命の根源を理解する助けとなり、絶滅の危機に瀕する生物を守るための知恵をもたらす。

 そして、可能性を豊穣へと変え、収穫を増大させる力を持つ。フアン氏は、トークンが単にロボットに動きを教えるだけでなく、人々に喜びを与え、手を差し伸べ、生活をより豊かなものにすると述べ、共に前人未到の領域へと大胆に進むための偉大な飛躍の始まりであると高らかに宣言した。

 

GTCの進化と「AIのスーパーボウル」への変貌

GeForceを手に持つフアン氏(出典:GTC: Spring 2025 Keynote、NVIDIA)

 

 GTCは、もともとはGeForceから始まったイベントであったが、25年の時を経て、本日発表されたGeForce RTX 5090に至るまで、目覚ましい進化を遂げてきた。フアン氏は、GeForceが世界中で完売するほどの成功を収めている現状を誇らしげに語った。

 過去10年間におけるAIの進化にも触れ、知覚AIから生成AIへ、そして推論能力を備えたAgentic AIへと発展してきた流れを説明。GTC自体も、AIの進展に伴い、その様相を大きく変貌させてきた。

  当初はテクノロジー業界のイベントであったが、現在ではヘルスケア、輸送、小売業など、あらゆる産業からの参加者が集うようになり、「AIのウッドストック」と形容された昨年から、今年はさらに「AIのスーパーボウル」と称されるほどの規模と重要性を持つに至った。フアン氏は、このスーパーボウルでは誰もが勝者であると述べ、AIがより多くの興味深い問題をより多くの産業や企業のために解決できるようになるにつれて、GTCへの参加者は年々増加している現状を指摘した。

 

AIの計算要件とその課題

AIの各段階の進化を支える根幹的な要素(出典:GTC: Spring 2025 Keynote、NVIDIA)

 

 AIの各段階の進化を支える根幹的な要素として、フアン氏はデータ問題の解決、ヒューマンインザループなしでのトレーニング問題の解決、そしてスケーリング則の三点を挙げた。特に、Reasoning AI(推論型AI)​の計算要件は、以前の予測を大幅に上回っていると強調した。その理由として、Reasoning AIが問題を段階的に分解し、複数の解決策を検討し、最良の答えを選択する推論(reasoning)能力を持つようになった点を挙げた。これにより、以前の「一発回答(one-shot)」型AIと比較して、より複雑な問題や、矛盾を含む制約条件を持つ問題に対しても、より正確かつ信頼性の高い解答を導き出すことが可能になった。

 しかし、この高度な推論能力を実現するためには、膨大な量の計算リソースが必要となり、生成されるトークンの数も大幅に増加する。フアン氏は、Reasoning AIのトレーニングには、過去のモデルと比較して容易に100倍以上の計算能力が必要になると述べ、その理由を詳細に解説した。

 

AIインフラストラクチャの転換点と「AIファクトリー」の提唱

 

世界中のデータセンターへの設備投資額予測(出典:GTC: Spring 2025 Keynote、NVIDIA)

 

 AIインフラストラクチャの驚異的な成長を示すため、フアン氏はHopper GPUの過去のピーク時の出荷量と、Blackwell GPUの最初の1年間の出荷予測を比較。この比較は、AIがまさに転換点(inflection point)を迎え、その有用性が飛躍的に向上していることを明確に示している。また、世界中のデータセンターへの設備投資が、アナリストの予測を超えて増加しており、2030年までに1兆ドルに達するとの見解を改めて示した。

 この成長の背景には、汎用コンピューティングの限界と、機械学習ソフトウェアをアクセラレータやGPU上で実行するという新たなコンピューティングパラダイムへの移行がある。フアン氏は、これを単なるデータセンターの量の増加ではなく、その構築方法の変革であると捉え、「AIファクトリー」という新たな概念を提唱した。

 AIファクトリーは、さまざまな情報へと再構成されるトークンを生成することのみを目的とする施設であり、その効率性とパフォーマンスが極めて重要になる。

 

次世代アーキテクチャ「Blackwell」と液冷技術の導入

 

Blackwell System(出典:GTC: Spring 2025 Keynote、NVIDIA)

 

 従来のスケールアウト型コンピューティングに加えて、フアン氏はスケールアップの重要性も強調した。分散コンピューティングは多くのコンピュータを連携させて大規模な問題を解決するが、その前に個々のノードの処理能力を高めるスケールアップが不可欠であると述べた。NVIDIAは、NVLink技術によってGPU間の高速接続を実現し、スケールアップを可能にしている。

 フアン氏は、過去のHGXシステムから、disaggregated NVLinkへと進化し、液冷技術を導入することで、1ラックに1.4エクサフロップスの計算能力を集約したBlackwellベースの新しいアーキテクチャを紹介した。これは、従来のエアフロー冷却で統合されたNVLinkシステムと比較して、劇的な性能向上と高密度化を実現するものである。

 

 推論ワークロードの重要性が増す中で、NVIDIAはBlackwellアーキテクチャにおいて、FP4(4ビット浮動小数点)などの低精度演算を導入し、Hopperと比較してISOパワー(同一消費電力)で25倍の性能向上を達成した。これにより、よりスマートなAIをより効率的に実行できるようになり、AIファクトリーの生産性が大幅に向上すると期待される。フアン氏は、Blackwellがまさに「生成AI時代のプロセッサー」であると改めて強調した。

 

AIファクトリーの最適化を実現する「NVIDIA Dynamo」

 

NVIDIA Dynamo(出典:GTC: Spring 2025 Keynote、NVIDIA)

 

 AIファクトリーの運用を最適化するためのオペレーティングシステムとして、NVIDIAは「NVIDIA Dynamo」を発表。Dynamoは、パイプライン並列処理、テンソル並列処理、エキスパート並列処理といった複雑な並列処理技術を駆使し、インフライトバッチ処理、分散推論、ワークロード管理、そして大規模言語モデルの効率的な実行に不可欠なKVキャッシュのルーティングなど、AIファクトリーの効率とパフォーマンスを最大化するための基盤ソフトウェアである。

 フアン氏は、DynamoをAIファクトリーにおける「オペレーティングシステム」と位置づけ、過去のデータセンターにおけるVMwareのような役割を果たすと説明した。Dynamoはオープンソースであり、Perplexityをはじめとする多くのパートナー企業と協力して開発が進められている。




 

GTC 2025は、NvidiaがAIおよび加速コンピューティングの分野で引き続きリーダーシップを示す貴重な機会となりました。Blackwell Ultra GPUやRubinアーキテクチャの発表、エージェンティックAIへの注力、そしてAI教育の促進は、NVIDIA社がAI技術の未来において中心的な役割を果たしていることを再確認させるものでした。

GTC 2025での革新的な取り組みが今後のAI時代における節目となる重要なイベントとなりました。

 

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